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オープニング公開。『ペルソナ3 リロード』の圧倒的な安心感


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 先日発表された『ペルソナ3リロード』のオープニング映像、本っっっっっ当に素晴らしい。もうすでに何回も見返しては、その完成度の高さに息を漏らしている。「『ペルソナ3』とはどのような作品だったのか?」「『ペルソナ3』を今の時代に新たに送り出すのならばどのようにすべきなのか?」という命題にしっかり向き合い、原典へのリスペクトと新しい『P3』の在り方の追求の両方を大切にし制作されているのがひしひしと伝わってきて、いちファンとして大満足な代物だった。

 まず、OP曲『Full Moon Full Life』が本当によく仕上がってる。『Burn My Dread』『When The Moon's Reaching Out Stars』などの原典のBGMからリズムやフレーズを引用し『P3』としてのアイデンティティを示しながらも、シリアス・ダークな雰囲気を強く打ち出した原典のOPとは少々趣を変えて、明るさと暗さ、そして力強さが一曲の中に同居する、まさに日常と非日常、生と死を体感する『P3』らしい一曲となっている。

 特に、曲の歌詞の最後が「Burn Your Dread」でシメてあるのが本当にファンの心理をよくわかっていらっしゃる。この一節で、この曲が原典オープニング『Burn My Dread』に続く曲として、カップリング曲あるいは返歌として作られていると強く感じた。

 長らくシリーズのメインコンポーザーを務めていた目黒将司氏が今作は外れるということで少々心配していたが、こんなものをお出しされてはもう何の心配もいらないだろう。

 映像についてももう本当に素晴らしくて、まず現代の画質でより魅力的になったS.E.E.Sの面々が生き生きと動いているのが感動ものである。曲のサビで彼らがペルソナを出すシーンが特にかっこよくて、ここまでキレッキレな動きで戦う彼らが見られるのがうれしくてならない。加えて、原典のオープニング映像の演出を引用したり、色や抽象化を生かして日常の裏にある非日常の不気味さを巧みに描いていたり、原典をクリアした人ならニヤリとするであろうシーンが随所に挟んであったりと、褒められる点が多すぎる。

 …という感じで語れることはまだまだあるのだが、ここらにしておいて。原典の尊重と新しさの追求を両立し、『P3』を新たな形で送り出す。『P3R』のオープニングからはそのようなアトラスのリメイクに対する姿勢がうかがえるものだった。そして、発売まであと1か月弱あるが、私はこのオープニングを観て『P3R』には何の心配もいらないな、と思った。ここまでの仕事をしてくれているチームならば、きっと『P3』への愛と熱量に満ちた良リメイクになっているだろう、と。

 

 正直、『P3R』の初報の際、私は喜びの一方で不安を覚えていた。リメイクによって『P3』の持ち前のダークさが薄くなってしまうのではないか、という不安である。

 『P5』をスタンダードとして『P3』が生まれ変わるのはかなり喜ばしいことではあるが、スタイリッシュかつ洗練されたデザインとなっている『P5』を基準として『P3R』が作られるとなると、原典『P3』の不安感やダークさが薄まってしまうのではないか、平たく言えばかっこよくなりすぎてしまうのではないか、という心配があったのだ。

『P3』という物語は、以降のシリーズ作品に比べると生々しく、そして陰鬱な展開が多い作品である。「死を想う」を全体のテーマとして打ち出し、悲しみや恐怖や怒り、そしてそれに立ち向かい受け入れる勇気を描く。

 そのような人の命や心の根幹を扱う生々しさは『P4』『P5』にも共通して存在しているけども、『P3』はそれらに比べるとその濃度が一段階濃い。あんまり書くとネタバレになるから差し控えるが、他者との軋轢、挫折、恐怖、復讐心、後悔、罪悪感…そういったマイナスの感情が強く打ち出されている。

 そして、そんな人の複雑さを描くことを通して逆説的に人の美しさを際立たせているのが『P3』の大きな特徴である。人によっては残酷さやギスギス感から拒絶感を覚えてしまうくらいの、人間の本質への肉薄。それが『P3』とそれ以降のシリーズ作品との大きな違いであり、同時に魅力なのだ。暗いからこそ、ギスギスしているからこそ、そこからのカタルシスが大きい。

 だからこそ、『P3R』が『P5』のようにかっこよくなりすぎて暗さがスポイルされると、『P3』としての最大の魅力が損なわれてしまうのではないかと心配していたのである。

 しかし…まったくいらぬ心配だろう。それは今回のオープニング映像を観れば火を見るよりも明らかだ。きっと彼らがまた、死を乗り越える命の物語をまた見せてくれるはずだ。そして最後には、あの切なさともの悲しさにまた出会えるのだろう。2月2日が楽しみだ。